主人公だって悩んでる

僕はビートよりもループのほうが好きである。

 

たくさんあるルートの中から最も正確なものを選択し、糸を紡ぐようにカードを1枚1枚丁寧にプレイし、決まれば相手の盾に触れることなく確実に勝利できる。

 

そして、熱い主人公よりもクールなサブキャラのほうが好きである。

 

ゴンよりクラピカが好きだったし、善吉より球磨川のほうが好きだったし、一護よりも雨竜が好きだった。

 

クールなキャラが策略の限りを尽くして、冷静に相手を倒すのが好きだった。

 

そんなサブキャラに憧れていた。

 

相手の能力がわからないままとりあえず突っ込む。

 

そんな主人公が嫌いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日のこと、相手の盾に祈るのが嫌いな僕はいつも通りループを相棒に戦っていた。

 

構築も結果もこの場でお見せできるほど立派なものではないので割愛するが、惨敗である。

 

そんな中、僕がアグロに興味を持ったのは身内との調整に付き合っている最中だった。

 

僕が赤単轟轟轟を使い対面は墓地ソース

 

これは僕のデッキではないため、プレイが不安だったが、

 

1ターン目 とりあえずブレイズクローを出す。

 

残りのハンドが1コス1コス罰怒ブランドだったため、これは展開するよりもブランドを出したほうが強いと思い、引いたカードを埋めて、そのままブレイズクロー1点。

 

スパイナーがトリガーする。

 

相手が「よし!!!!!!」と喜び、僕も悲鳴をあげながら顔を上に向けるが、天井のシミと数秒にらめっこして気づく。

 

「これむしろ美味しいのでは???????????????」

 

相手から見ると、ブレイズクローを処理できたのはラッキーだったかもしれないが、スパイナーは本来なら3面、返しのターンの殴り返しも含めると、最大で4面とれるカードである。

 

盤面が命のアグロにとって、踏んだら負けといっても過言ではないカードだ。

 

もし僕が罰怒ブランドを埋めて1コストをばらまいていたら、そこで試合が終わっていただろう。

 

しかし、今僕が失ったリソースはブレイズクローのみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕の中で世界が変わった。

 

今までは、アグロのことを踏んだら負けなデッキだと認識していた。

 

今回はまぐれだったが、これを意図的にできるとしたら?

 

踏まないことを祈るのではなく、被害が少ないタイミングで自ら踏みに行くという行為ができるのだとしたら?

 

その体験はループ使いのサブキャラを、主人公に変えるには十分だった。

 

結局、その試合は上から引いた ミサイル”J-飛” をマナチャージせずにそのまま置き、次のターンに1コス1コス罰怒ブランドでジャスキルが通って勝つのだが、これがもしCSで、僕が墓地ソース側だったら、「相手、踏むタイミング上手過ぎかよ~」だけで片づけていたかもしれない。

 

主人公だって何も考えてないわけじゃない

 

むしろ相手の能力がわからないまま突っ込むのだ。考えることは、サブキャラよりも圧倒的に多かったはず。

 

悩んで悩んで悩んで悩んで、それが正解かどうかもわからぬまま、自分だけを信じて戦う。

 

なんてかっこいいのだろうか。

 

僕も主人公になりたい。

 

この時ハッキリとそう思ったのである。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして後日、未来のミライを観てきた帰りに手ぶらで行きつけのショップに寄ると、身内が何人か遊んでいたため、赤白轟轟轟を触らせてもらう。

 

色が足りなかったり、行くべき所を溜めてしまったり、赤単との違いにかなり戸惑ったが、帰る頃にはある程度方向性は掴んでいた。

 

赤白も確かに強い。アグロに対する考えが変わった以上、このデッキにももっと触れるべきだろう。

 

しかし、僕はこのデッキに、あの憧れた主人公の面影は感じられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

1週間ほど前からvaultで調整はしたが、赤白と赤単どちらにするかが決まらなかった。

 

こんな時主人公ならどうするだろうか。

 

迷わず自分を信じるのではないか。

 

 そう思い、赤単でCSに臨んだのだが、結果は3位

 

僕はCSで16落ちを繰り返しており、入賞したのはこれが初である。

 

あんなにループにこだわっていたサブキャラが、初めて入賞したデッキがガチガチのアグロとは皮肉なもんだが、素直にうれしかった。

 

これがその時のデッキリスト

 

4×10である。

 

凶戦士ブレイズ・クロー

ホップ・チュリス  

グレイト”S-駆”       

螺神兵ボロック    

ドリル・スコール   

スチーム・ハエタタキ 

ミサイル”J-飛”           

 轟車”G-突”        

”罰怒”ブランド        

”轟轟轟”ブランド            

 

 

 

全ての試合を書きたいところだが、ここに記すには余白が少なすぎるので、どうしても伝えたい試合だけ。

 

 

 

 

予選3回戦 ドロマーロージア

 

僕はこの対戦相手を知っている。

 

あまり話したことはないが、身内のコイジー君と一緒にいた人だ。

 

一度公認で当たっており、その時はロージアを使っていた。

 

今回も白いドラグハートが超次元に見えた。

 

公認の時に、僕はバスターを使い、彼のロージアを貫通している。

 

もう一度貫通されないか不安なはずだ。

 

そういう気持ちの時は心理的にグーを出しやすいだろう、僕は身を乗り出してパーを出す。

 

先行をとる

 

2ターン目 G突

 

3ターン目 G突スコール G突2点

 

実はここで轟轟轟を持っていたのだが、あえて出さなかった。

ロージア対面には、やられたら負け確な動きがいくつかあり、ドラサイサッヴァーク、トリガードラゴンからチェンジミラダンテなどがそうだが、それ以外であれば轟轟轟ブランドで殴り返すことで、一度とられた盤面を再び取り返すことができる。

 

ドラサイを踏んだが、出てきたのはミラクルスター

 

G突にアタック時にチェンジも無し。

 

考えていた事と同じ展開になった。

 

正直、ニヤニヤが止まらなかった。

 

上から引いたミサイル”J-飛” をバトルゾーンに出し、轟轟轟ブランドでミラクルスターを殴り返し。

 

轟轟轟で引いてきたカードがSAだとうれしいなぁとか思いつつ確認するが、残念ながらブレイズクロー。

 

まあ誤差だろう。

 

G突2点にトリガーは無し。

 

残りの盾は1枚。

 

 

この時、僕の頭の中は、赤単を使ってドラゴンズサインを踏んだのにも関わらず、ロージアを貫通したことを、身内に面白おかしく話すことでいっぱいだった。

 

盤面に生き物が3体いて、盾が1枚、相手のマナはまだ2マナ。

 

 

こちらが圧倒的有利である。

 

だが、圧倒的有利でも思考を巡らせることは忘れない。

 

僕は慢心によって負けた主人公を何人も知っている。


ミサイル”J-飛” もアタックすることができる場面だが、ここで一度ターンを返し、次のターンにミサイル”J-飛から殴ることで、カーネルを踏んだ時に、盤面からカーネルを排除しつつターンを返すことができる。

 

チェンジミラダンテの負け筋が消えておりテック団の波壊Goを踏んでも止まらない。

 

これでターンを返そうと思ったが、一瞬、脳裏に嫌なものが浮かんだ。

 

オリオティスジャッジ...

 

ジャッジが飛んでくるのであればミサイル”J-飛” も殴って盾を0にし、上からSAに賭けたほうが合理的である。

 

結局、既にマナに見えているカーネルの方をケアしたのだが、もうお分かりだろう。

 

「3マナ、ジャッジで。」

 

僕は負けたのだ。

 

 

これは昼ごはんの最中に気が付いたのだが、僕は大きなプレイミスをしていた。

 

僕は、SAを置いた方が強いと思いミサイル”J-飛”を出したが、カーネルをケアするために溜めるプランをとるのであれば、ここで出す生き物はSAである必要はない。

 

つまり、ミサイル”J-飛”を置いてマナを3マナにし、轟轟轟で引いてくるであろう生き物を横に置いて殴る方がはるかに合理的だった。

 

慢心で負けるまいと思っていた時には、既に慢心により負けが確定していたのである。

 

 

 

3位決定戦三本目

 

準決勝で先ほどと同じドロマーロージアに負けたため、3決へ。

 

相手の盾はどんな殴り方でも勝てない埋まり方をしており、割り切ることは出来たが、僕は「流れ」というものを信じているので、もし、予選で正しいプレイをしていたら、準決でも勝てたかもしれないと本気で思っていた。

 

3本目はこちらが先行

 

初手は ”罰怒”ブランド 、”罰怒”ブランド 、ブレイズクロー、スコール、ハエタタキ

 

”罰怒”ブランドを置いて、ブレイズクロー

 

相手はジョジョジョジョーカーズからジョラゴンサーチ

 

ここで引いてきたのはグレイト”S-駆” 

 

1コス1コス ”罰怒”ブランド のプランがとれそうなので、その周辺のパーツはキープしたい。

 

次にヤッタレマンが出てくるのであればハエタタキをぶつけたいが、2ターン目にヤッタレが出てこないということはハエタタキが完璧に腐るということ。

 

3ターン目のパーリ騎士にハエタタキを撃っても嬉しくもなんともない。

 

ヤッタレが出てこなかった際に欲しいのはハエタタキの方ではなく、次のパーリ騎士に繋げさせないスコールの方だ。

 

ここはノーセットでブレイズクロー1点。

 

相手はヤッタレ。

 

3tターン目、再びグレイト”S-駆” を引く。

 

ドリルスコールも撃ちたいが、ハエタタキとスコール両方撃つと、1コス1コス ”罰怒”ブランドのプランの時のリソースが足りなくなる。

 

スコールセット、ヤッタレにハエタタキをぶつけ、ブレイズクロー1点。

 

ハンドだけでジャスキルが完成しているので、ここら辺でトリガーを踏んでおきたかったが、何も踏まなかったため、次のターン仕掛けることに不安があった。

 

相手はパーリ騎士。

 

ここで轟轟轟ブランドを引いてくる。

 

今仕掛けても、次のターンにしかけても、踏み方によってはトリガー1枚で壊滅する盤面だったのが、轟轟轟を引いたことにより、次のターンに総攻撃をしかけるとトリガー二枚要求の盤面に豹変した。

 

これは天からのお告げに違いない、ノーセット1点。

 

相手はパーリ騎士2体目を出し、ブレイズクロー殴り返し。

 

ターンが返ってきた。

 

引いたカードを埋め、ソニックソニック”罰怒”ブランド ”轟轟轟”ブランド  

 

轟轟轟ブランドで引いてきたカードがまたしても轟轟轟!!!!

 

この時、本当に神はいると思った。

 

正しいプレイをすると引きがついてくる、というのは本当なのだろう。

 

轟轟轟が1体追加されたとこで、セブンスセブンを2枚踏むと負けるのに変わりはないが、今の僕には神の加護がついている。

 

踏むはずがない、Wブレイク!

 

トリガーは無し。

 

轟轟轟ブランドでダイレクトアタック

 

試合の後、対戦相手が「ノートリかよ...」と言っていたのが聞こえてきた。

 

この試合の自分の努力を否定されてるようで悲しくなったが、アグロに触る前の僕なら同じことを思ったかもしれない。

 

彼にもいつか、主人公も悩んでいることに気が付いてほしい。

 

そしていつか、彼も主人公になってくれることを願っている。